コラム

大腸がんは防げる時代へ――予防と検査で命を守る ~熊本市全大腸内視鏡検査~

大腸がんは年々増加しており、新規発症数はがんの中で第1位、死亡数は肺がんに次いで第2位となっています。大腸がんは早期に発見されて治療された場合、90%以上が完治するとされており、早期発見することが重要となっています。消化器領域では、ピロリ菌感染者の減少により胃がんが減少している一方、生活習慣の変化により大腸がんが増加しており、それに対して行政が対策を講じています。その一環として令和7年10月から熊本市全大腸内視鏡検査が始まります。対象者は熊本市在住の55歳~59歳の方で、50歳以降に全大腸検査を行ったことがないことが条件となります。令和7年度は先着1000人限定であり、検査料は無料となります(*ポリープ切除を行った場合は保険診療となります)。

 

                                                 *国立がん研究センター がん情報サービス がん登録・統計の「最新がん統計」より

 

大腸がんの一次予防とし関連があるとされているものは以下のものがあります。

危険因子:加工肉、赤身肉、過度のアルコール、肥満、喫煙

抑制因子:運動、食物繊維、全粒穀物、乳製品、カルシウム

一次予防としては、節酒・運動・適正体重の維持が重要です。さらに、多量の加工肉・赤身肉の摂取や喫煙を避け、食物繊維やカルシウムの積極的な摂取も有用とされています。

その他、アスピリンの服用も大腸腺腫と大腸がんの発生を抑制すると報告がありますが、大腸がんを含めた死亡リスクが増えたとの報告もあるので注意が必要です。

大腸がん対策として40歳以上を対象とした便潜血検査が行われていますが、検診受診率および精密検査の受診率も低いため、その効果は限定的となっています。また、人間ドックや健康診断で行われているS状結腸内視鏡検査に関して多くのRCTにより死亡率減少効果が証明されていますが、受診者が少ないことが課題となっています。全大腸内視鏡検査は近年欧米のコホート研究や症例対照研究により罹患率・死亡率減少効果が報告されており、今後日本でも広まっていくものと思われます。

検診は症状がないときに行うものですが、以下に当てはまる方には大腸検査をおすすめします。

①便潜血陽性 ②血便 ③便通異常 ④貧血 ⑤腹痛 ⑥体重減少・腹部腫瘤などで大腸がんを疑う患者、あるいは、大腸がん以外の炎症性疾患や機能性疾患を疑う場合となっています。これに加えて、大腸がん家族歴から遺伝性大腸がんの可能性が疑われる方にも推奨されます。

ここまでは大腸内視鏡を受けるまでの流れを説明してきましたが、検査後の次回の実施時期についてもガイドラインに記載があります。

 

                                   *大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン

** TCS:total colonoscopy 全大腸内視鏡,AA:advanced adenoma 高異型度腺腫もしくは10mm以上の腺腫

 

ガイドラインでは、9個以内の腺腫であれば3年後の内視鏡検査、2個以内であれば5年後まで許容されるとなっています。これに関しては推奨となっており、様々な因子の関係でそれより短い間隔で検査を行った方がいいこともあります。患者要因としては先に述べた症状がある方や炎症性腸疾患、遺伝性大腸がんの可能性がある方は1-2年後がいいと考えます。技術要因としては腺腫発見率(adenoma detection rate:ADR)、盲腸到達率、withdrawal time(抜去時間)などが関係します。これは内視鏡医の技術のことで、きちんと盲腸まで内視鏡を挿入できて、適切な時間で観察を行い腺腫を見逃さないことが重要になります。一言でいえば、内視鏡の技術が高い医師ということになりますが、一般の方が判断するのは難しいと思いますので、わかりやすい指標としては内視鏡専門医を持っていること、適切なトレーニングを受け、検査だけではなく治療の経験も豊富な方が上手な可能性があると思われますので参考にして下さい。その他、腸管洗浄がきれいにできていなければ見逃しが多くなりますので、見えていない箇所が多ければ検査間隔を短くした方がいい場合もあります。

内視鏡後発生大腸がん(post-colonoscopy CRC:PCCRC)も重要な問題です。PCCRCとは、大腸がんが見逃された結果として、内視鏡検査後に発生した大腸がんのことを指します。PCCRCの要因として①適切な大腸内視鏡検査での見逃し病変 ②不適切な大腸内視鏡検査での見逃し病変 ③検出されたが切除されなかった病変 ④不完全切除病変 ⑤新規発生がんが挙げられ、どの施設でも件数が多ければPCCRCが見つかることがあります。

このような問題があるため、ガイドラインでは3~5年後の検査が推奨されていても、内視鏡を行わない年には便潜血検査を併用することで、PCCRCを早期に発見できるようにすることが必要と考えられます。

大腸がんは早期発見早期治療が重要ですが、ポリープの段階で切除することで大腸がんの予防をすることができます。少しでも大腸がんで亡くなる方を減らすべく、今後も尽力してまいります。熊本市全大腸内視鏡検査の対象となる方はもちろんのこと、40歳以上で一度も検査を受けたことがない方や、以下の症状・状況に該当する方も、お気軽にご相談ください。

先に述べましたが、

①便潜血陽性 ②血便 ③便通異常 ④貧血 ⑤腹痛 ⑥体重減少・腹部腫瘤などで大腸がんを疑う場合
あるいは、大腸がん以外の炎症性疾患や機能性疾患が疑われる場合、または大腸がん家族歴があり遺伝性大腸がんの可能性がある方も対象です。

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