
コラム
総ビリルビン高値は心配?―体質性黄疸を中心に―
当院には健康診断で肝機能異常を指摘された方が多数来院されますが、その中の1割程度に総ビリルビン(T-Bil)が高値になっている方がおられます。
総ビリルビンは黄疸に関係しており、高い場合は精密検査の対象なのですが、総ビリルビンのみが高値な場合とそれ以外の肝胆道系酵素も高値な場合で疾患が変わってきます。
【総ビリルビンと肝胆道系酵素の両方が高値な場合】
・閉塞性黄疸(胆管結石、胆道癌、自己免疫性膵炎、慢性膵炎など)
・肝細胞性黄疸(ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、薬剤性肝障害、肝硬変など)
・肝内胆汁うっ滞性黄疸(原発性胆汁性胆管炎、薬剤性肝障害など)
この場合は発熱、腹痛、肉眼的な黄疸などの症状を認めることが多いです。
【総ビリルビンのみ高値な場合】
・体質性黄疸
・溶血性貧血
健康診断異常があった方のほとんどは総ビリルビンのみ高値な場合がほとんどですのでこちらについて解説を行っていきます。
体質性黄疸
肝における先天性ビリルビン代謝障害によって生じる黄疸のことでCrigler-Najjar症候群、Gilbert症候群、Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群の4つに分類されます。
| Crigler-Najjar症候群 | Gilbert 症候群 | Dubin-Johnson症候群 | Rotor 症候群 | |
I型 | Ⅱ型 | ||||
Bil | 間接Bil↑ | 直接Bil↑ | |||
遺伝形式 | 常染色体劣性 | 常染色体劣性 | 常染色体優性/劣性 | 常染色体劣性 | 常染色体劣性 |
頻度 | 極めてまれ | まれ | 人口の2~7% | まれ | |
発症時期 | 出生直後 | 新生児~乳児期 | 思春期以降 | 全年齢(小児期に多い) | |
治療 | 肝移植、光線療法、血漿交換 | 光線療法、 血漿交換 | 不要 | ||
予後 | 無治療では 核黄疸を起こし2-3歳で死亡 | 良好 | |||
*総ビリルビン=直接ビリルビン+間接ビリルビン
4つの疾患は直接Bil優位と間接Bil優位の疾患に分けることができます。
直接Bil優位な2疾患は治療不要で予後良好なので、この時点で基本的に経過観察でもいいのですが、診断するにはBSP試験、ICG試験などの検査をするので総合病院へ紹介します。
間接Bil優位な場合はCrigler-Najjar症候群とGilbert症候群がありますが、Crigler-Najjar症候群は出生直後~乳児期に発症するので、健康診断で発見されることは稀です。健康診断でビリルビン上昇のみを指摘され、間接Bil優位な方はGilbert症候群が大半を占めていると思われます。稀に軽症のCrigler-Najjar症候群も存在するかもしれませんが、治療不良なことから症状が無ければ両者の鑑別を行うことはほとんどありません。
間接Bil優位の場合は溶血性貧血の可能性もありますが、こちらは血液検査で溶血があり、Hb低下やLDH上昇がありますので鑑別は比較的容易です。

これまでの経験上、総ビリルビンのみ高値な場合はすべて間接Bil優位で、溶血を認めた方は数名のみでしたので、ほぼGilbert症候群と思われます。
Gilbert症候群は治療不要で予後良好ですので、総ビリルビンのみ高値な方は過度な心配はせずに、専門機関での精密検査を行って下さい。
ちなみにここで言いたいことは総ビリルビンのみ高値な場合は検査をしなくても良いということではなく、心配することはないと言いたいのであって、きちんと検査を行っていただくことが重要です。









