胃内視鏡検査でわかる主な疾患
胃痛
胃痛とは
胃痛とは、みぞおちや上腹部に感じる痛みのことです。
痛み方には個人差があり、「ズキズキ」「シクシク」「キリキリ」などと表現されます。
軽い痛みであれば、あまり心配する必要はありませんが、痛みが続いたり繰り返したりする場合は、何らかの原因が隠れている可能性があります。
その場合は、原因をしっかり調べるためにも、一度医療機関を受診されることをおすすめします。
注意が必要な胃痛
次のような症状を伴う場合は、緊急性が高い可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。
- 冷や汗を伴う激しい痛み
- 嘔吐や吐血
- 黒色便(タール状の便)
また、以下の症状がある場合も、早めの診察をおすすめします。
- 痛みが4週間以上続く
- 胸焼けや吐き気を伴う
一時的な痛みであっても、不安を感じる場合は、お気軽にご相談ください。
胃痛の原因
胃痛の主な原因には、以下のようなものがあります。
ピロリ菌感染
ピロリ菌は胃の粘膜に感染し、炎症や潰瘍を引き起こすことがあります。
これにより、持続的な胃痛が生じることがあります。
食生活の乱れ
脂っこい食事、刺激の強い食品(香辛料など)、アルコールの過剰摂取は、胃に負担をかけて痛みの原因となることがあります。
バランスの取れた食事を心掛けることが大切です。
ストレスや睡眠不足
自律神経の乱れが胃酸分泌を過剰にさせ、胃粘膜を傷つける原因となります。
胃痛の検査
胃痛の原因を特定するために、超音波検査や血液検査を行います。
必要に応じて胃内視鏡検査を実施し、早期発見と治療を目指します。
不安があれば、早めにご相談ください。
胃炎
胃炎とは
胃炎とは、胃粘膜に炎症が起きた状態を指します。
例えば、暴飲暴食や強いストレスが続くと、胃を守るための粘液の分泌が減り、その結果として胃粘膜が傷つき、炎症が起こることがあります。
初期の胃炎では、胃粘膜がただれる「びらん」という状態が見られることが多く、これが進行すると胃潰瘍へとつながる場合もあります。
放置せず、早めに適切なケアを行うことが大切です。
胃炎の原因
食生活
脂っこい食事や香辛料を多く含む刺激の強い食品、アルコールの過剰摂取は、胃に大きな負担をかけることがあります。
バランスの取れた食事を心掛けることで、胃炎の予防につながります。
ストレス
忙しい毎日や精神的な負担が続くと、自律神経が乱れ、胃酸分泌に影響を及ぼします。
その結果、胃粘膜が傷つき、胃炎を引き起こすことがあります。
ピロリ菌
ピロリ菌の感染は胃粘膜を傷つけ、慢性胃炎や萎縮性胃炎の原因となることがあります。
ピロリ菌が関与している場合は、適切な治療を受けることが大切です。
胃炎の検査
胃炎の原因を特定するためには、胃カメラが有効です。
胃粘膜の状態を直接確認することで、炎症やびらん、萎縮の程度を詳しく調べることができます。
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎は、胃酸や食べ物が食道に逆流し、食道の粘膜に炎症を引き起こす疾患です。
例えば、食後に胸焼けや酸っぱい感じが喉に込み上げてくることがよく見られます。
これは、胃と食道の間にある筋肉(下部食道括約筋)が緩むことで起こります。
こんな症状はありませんか?
以下の症状が持続する場合、逆流性食道炎の可能性があります。
- 胸焼けや酸味のある液体がこみ上げる(呑酸)
- 頻繁なげっぷや喉の違和感
- 胃痛、胃もたれ、吐き気
逆流が起きてしまう原因
逆流性食道炎は、次のような原因で発生します。
筋力の低下
加齢や生活習慣により下部食道括約筋が弱まります。
食道裂孔ヘルニア
胃の一部が胸部に押し出され、逆流を引き起こします。
腹圧の上昇
肥満や妊娠、姿勢の悪さが影響します。
逆流性食道炎の検査
逆流性食道炎の診断には、問診と胃カメラ検査を行います。
胃カメラで炎症が確認されなくても症状がある場合は「非びらん性胃食道逆流症」と診断されることがあります。
不安があれば早めにご相談ください。
ピロリ菌
ピロリ菌とは
ピロリ菌は、幼少期に口を介して感染する細菌です。
慢性胃炎や萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、さらに胃がんの原因となることが知られています。
主な感染経路は、上下水道が整備されていない地域での井戸水や、親族との経口接触です。
現在では衛生環境の改善により感染者数が減少しています。
ピロリ検査を行うには
ピロリ菌検査は、健康診断や胃カメラ検査で行います。
健康診断で感染を指摘された場合でも、保険適用で治療するためには胃カメラ検査が必要です。
また、胃潰瘍や萎縮性胃炎などの病変が疑われる場合にも検査が推奨されます。
ピロリ菌感染を疑う胃カメラ所見
以下の所見がある場合、ピロリ菌感染が疑われます。
- 萎縮性胃炎
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 胃過形成性ポリープ
- 胃がん
ピロリ菌検査の方法
ピロリ菌感染の確認方法は、胃カメラを使用するものとしないものがあります。
内視鏡を使用した検査
迅速ウレアーゼ試験
胃の組織でアンモニア産生を確認します。
鏡検法
胃組織を染色し、顕微鏡で菌の存在を確認します。
培養法
胃の組織を培養して菌の有無を調べます。
内視鏡を使用しない検査
尿素呼気試験
呼気中の二酸化炭素を調べて菌の有無を確認します。
抗H.pylori抗体測定
血液や尿中の抗体を測定します。
便中H.pylori抗原測定
糞便中の抗原を検出します。
ピロリ菌検査時の注意点
食事の影響を避けるため、迅速ウレアーゼ試験や尿素呼気試験は絶食状態で行います。
胃薬や抗生剤を服用中の場合、検査結果に影響が出る可能性があるため、2週間以上の休薬が必要です。
ピロリ除菌
除菌治療では、胃酸を抑える薬1種類と抗生剤2種類を7日間、朝晩服用します。
成功率は80〜90%で、2回目まで保険適用されます。
ただし、副作用として蕁麻疹や下痢が生じる場合があるため、何か不安があればご相談ください。
また、薬のアレルギーがある方や、肝機能・腎機能に問題がある方は事前にご相談ください。
ピロリ除菌判定
除菌治療後は、成功したかどうかを確認する検査が必要です。
尿素呼気試験や便中抗原測定を用いて判定します。
除菌が成功すると、胃がんのリスクが1/3に低下すると報告されています。
また、除菌判定は薬の服用終了後4週間以降に実施するのが推奨されていますが、場合によっては2〜3か月後の確認が望ましいこともあります。