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胃腸科・消化器内科

機能性消化管障害

消化器疾患ブログの初回は機能性消化管障害を取り上げようと思います。

一般の方は聞いたこともないと思いますし、他科のDrでも聞いたことがある人は多くないかもしれません。

機能性消化管障害は英語でfunctional gastrointestinal disorder(FGID)と言います。

定義としては「器質的疾患、代謝性疾患、内分泌疾患などの症状の原因となる明らかな疾患がないにも関わらず、慢性的に胃腸の症状をきたす疾患」を言います。

言いかえると、検査しても異常がみつからないのだけれど、腹痛や下痢、便秘などの症状をきたす病気となります。

代表的な病気としては機能性ディスペプシア過敏性腸症候群などです。過敏性腸症候群は聞いたことがあると思いますが、詳しく知らない方が多いのではないでしょうか。過敏性腸症候群は私が医師になる前から病名としてありましたが、機能性ディスペプシアは2013年に保険病名として登録され、2014年にガイドラインが作成された、わりと新しい疾患概念です。

今までの消化器分野では「お腹が痛いので胃カメラしたら胃潰瘍がありました」というような形態学に基づいた診療体系がほとんどであったところに、症状に重きを置いた疾患が出てきたことは画期的なことではないかと思っています。

・人前にでると緊張してお腹が痛くなる

・朝からお腹が痛くなったり、トイレからでてこれなくて学校や仕事に行けない

・電車にのるとお腹が痛くなりトイレに行きたくなる

・胃が痛くて病院で検査したが異常がないと言われた。でも症状が続くのでいろんな病院を転々としている。

上記があれば機能性消化管障害というわけではないのですが、このようなことを経験したり、見たり聞いたりしたことがある方も多いのではないでしょうか。そして胃腸が弱いとか、メンタルが弱いとか言われ、根性がないからだと言われることもあったのではないでしょうか。

正直、私も医師になる前はそう思っていましたし、医師になってからも若手の時は思っていましたが、2013年にアコファイド®錠という新規薬剤が発売されたことで、大きく変わることとなります。この薬剤は機能性ディスペプシアに対する薬剤であり、このときに機能性ディスペプシアという病名を初めて聞ききました。それから機能性ディスペプシアを含めた機能性消化管障害は消化器分野では徐々に浸透し、すべてが解明されているわけではありませんが、疾患概念も徐々に確立されてきております。

これまでメンタルが弱いと片付けられていたことが、病気だった可能性が出てきました。根性で何とかしろと言われていたことが、薬で治るかもしれないことがわかってきました。これは我々医師にとっても患者様にとっても大いに意味があることだと思います。

機能性消化管障害はストレスが関連していると言われ、ホルモンや自律神経に影響を与え様々な症状を引き起こすことがわかっています。ストレス以外の原因もあるのですが、「結局メンタルじゃん」と先ほど言ったことと矛盾していると思われるかもしれません。しかし、ここで重要なのは機能性消化管障害には診断基準や治療法があり、ガイドラインが作成されているということです。メンタルが弱いとか根性がないとか言われると、もともとストレスが原因なのに更にストレスが溜まってしまい症状が良くなりません。ただ、ガイドラインがあることで、疾患概念が捉えやすく、治療のアプローチがスムーズとなります。これによって医師も説明や治療がしやすくなり、患者さまも納得しやすくなりますので、ストレスや不安感の軽減され、症状改善につながります。

初めに言いましたように機能性消化管障害は最近言われるようになった疾患であり、一般の方には浸透していないと思います。お腹の調子が悪くなりやすい方は機能性消化管障害の可能性があります。現在はストレス社会と言われるますので、機能性消化管障害になりやすい状況にあります。治療できることもありますので、メンタルが弱いからだと決めつけるのではなく、まずは検査をすることをお勧めしますので、当院では胃腸科・消化器外来内視鏡検査をご希望の方は当院にご相談ください。

ブログ:機能性ディスペプシア」と「ブログ:過敏性腸症候群」をご覧下さい。

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