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B型肝炎やC型肝炎、アルコール性・非アルコール性脂肪肝やその他の肝疾患に対して肝臓専門医が診療を行います。
当院はB型肝炎の治療薬である核酸アナログ製剤、C型肝炎の治療薬であるインターフェロン、インターフェロンフリー(DAAs)の指定医療機関及び治療実施医療機関となっていますので治療の導入、継続まで行うことができます。

一般的に消化器内科と言われる分野には胃や大腸などの消化管、肝臓、胆のう・胆管・膵臓にわかれています。肝臓には様々な疾患があり、肝炎ウイルスなどによるによる感染症、脂肪肝(アルコール性、非アルコール性)、薬剤性の肝炎、自己免疫疾患、肝硬変、肝がんなど多岐にわたります。最近は、脂肪肝からの癌の発生も多く報告されており早期の発見・治療介入が必要となってきています。当院は肝臓専門医がおりますので、健康診断での肝機能異常、脂肪肝の早期発見・生活指導、肝炎ウイルス・肝硬変の検査・治療、肝がんの診療を行っています。肝臓という言葉は皆さん知っていると思いますが、病気となるとなじみがなかったり、どういうときに検査した方がいいかわからないと思いますので簡単に説明していきます。

どういう症状のときに受診すればいいのか

肝臓は「沈黙の臓器」と言われますが、病気が進行しないと症状が出にくいのが特徴です。肝機能障害を指摘されている方で、目や体が黄色い(黄疸)、お腹が膨れてきた(腹水)などの症状が出た時には肝硬変になっている可能性があります。ほかの病気もそうですが、症状が出る前に早期に発見することが大事となります。そのためにも健診や人間ドックでの採血・エコーなどの画像検査を受けることをお勧めしています。アルコール多飲している方は脂肪肝になりやすく、また脂肪肝は糖尿病や脂質異常症に合併することも多いので、ご心配な方は一度ご相談ください。

脂肪肝(非アルコール性)

エコー画像

①肝臓のエコー輝度の上昇
②肝腎コントラストの上昇
③脈管の不明瞭化
④深部エコーの減衰

脂肪肝は肝臓に脂肪が多くたまった状態のことを言い、アルコール性、それ以外が原因になる非アルコール性に分類されます。多量の飲酒を続けていると肝硬変や肝がんになることは一般的に言われていますが、お酒を飲まない人の脂肪肝も肝硬変、肝がんになることがわかっており、最近増えてきています。肝線維化(肝臓が硬くなること)が進むにつれて、非アルコール性の脂肪肝→脂肪肝炎(NASH)→肝硬変と進展し、すべての病態を一括りに非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と言います。NAFLDは肥満・脂質異常症・糖尿病・高血圧と合併することが多くメタボリックシンドロームの肝臓病と考えられています。NAFLDの有病率は日本で9~30%と言われており、全国で1000万人以上と言われています。年齢層は男性は中年層、女性は高齢層に多い傾向があると報告されています。非アルコールは全く飲酒しない人ではなく、アルコール摂取量に基準があります。エタノール換算で男性30g/日未満、女性20g/日未満と定義されており、男性であればビール:750ml未満、日本酒:約1.5合未満(270ml)、焼酎:約0.9合未満(150ml)、ワイン:2/5本(約313ml)となります。NAFLDに対して有効な治療薬はほとんどありません。メタボリックシンドロームと同様に運動や生活習慣の改善、糖尿病や脂質異常症などの基礎疾患がある場合は基礎疾患の治療を並行して行います。劇的に改善することは少ないので、病状を悪化させないことと、定期的に検査を行うことが大切です。また、肝線維化が進むと肝硬変や肝がんのリスクが高くなることがわかっており、肝線維化の程度を把握することも重要です。最近は肝線維化マーカーが色々出てきており、その一つであるFIB-4 indexは血液検査で分かりますので、NAFLDの現状評価とこれからのアプローチに関して的確に行いやすくなっています。心配な方やご希望される方は診断を含めて一度ご相談ください。

*2020年に脂肪肝の新規概念であるMAFLD(metabolic dysfunction-associated fatty liver disease)が提唱されました。MAFLDは脂肪肝に「肥満」、「2型糖尿病」、「2種類以上の代謝異常」のいずれかが併存している疾患概念です。MAFLDはNAFLDに比べて肝線維化進展リスクが高いと報告されており、肝がんができやすい可能性がありますので、今後色々な報告が出てくるものと思われます。

アルコール性肝障害

アルコールの多飲を続けることで脂肪肝、肝炎、肝硬変と進行していきます。こちらもアルコール摂取量に基準があり、エタノール換算で男性60g/日以上、女性40g/日以上と定義されており、男性であればビール:1500ml以上、日本酒:約3合以上(540ml)、焼酎:約1.8合以上(300ml)、ワイン:4/5本以上(約626ml)となります。治療の基本は節酒・禁酒です。肝炎や肝硬変になればそれぞれの治療を行いますが、お酒をやめることができない方も多いので、様々な医療機関と連携しながら診療が必要になることもあります。自分では飲酒量が多いと自覚していない方も多いので、ご家族の方からのご相談でも構いませんのでお気軽に受診してください。

C型肝炎

日本で約150万人の方がC型肝炎ウイルスに感染しているとされており、日本の肝がんの原因の1位となっています。C型肝炎ウイルスは肝臓に感染し、肝炎を引き起こします。肝炎が持続すると慢性肝炎→肝硬変と進行し、肝がんになる可能性がありますので早期発見・早期治療が必要になります。C型肝炎ウイルスは1989年に発見された比較的新しいウイルスで、1999年に核酸増幅検査が導入されてからは、輸血感染はほとんどなくなりました。家庭内や集団生活で血液に触れることがなければ、感染することほとんどありませんし、食器や入浴で感染することはありません。

感染経路:C型感染ウイルスは血液を介して感染します。

【以前】

感染している人の血液を用いた輸血・血液製剤

汚染された注射器や注射針による医療行為

【現在】

ピアスの穴開け器や注射器の使いまわし

医療行為での針刺し

母子感染(感染率は低い)

性行為(感染率は低い)

以前はインターフェロンによる治療が主流で、発熱や倦怠感などの副作用があり、いい印象を持っていない方も多いと思いますが、最近では内服薬を最短で8週間内服すれば治療できる時代になりました。未治療の肝炎であれば、95%以上の確率でウイルスを排除できるようになりました。現在ウイルスに感染している方や以前治療がうまくいかなかった方は一度当院にご相談ください。

B型肝炎

日本で約130万人の方がB型肝炎ウイルスに感染しているとされております。B型肝炎ウイルスも肝臓に感染し、肝炎を引き起こします。肝炎が持続すると肝炎→肝硬変と進行し、肝がんになる可能性がありますので早期発見・早期治療が必要になります。

感染経路:B型肝炎ウイルスは血液・体液を介して感染します。

【垂直感染】 

出生時の母子感染

【水平感染】

傷のある皮膚への体液の付着

性行為

静注用麻薬の乱用

刺青

ピアスの穴開け

不衛生な器具により医療行為

出血を伴うような民間療法

その他

2016年4月1日以降に生まれた0歳児にはワクチンが接種されるようになりました。ワクチンにより抗体ができればB型肝炎ウイルスに感染しません。B型肝炎はC型肝炎と違ってウイルスを排除する薬はなく、現在のところウイルスの増殖を抑えて肝炎を鎮静化させる薬しかありません。治療薬はインターフェロンと核酸アナログ製剤の2種類に大きく分けられます。インターフェロンは病態によって24週もしくは48週間の投与を行い、奏効すればインターフェロンの投与終了後もウイルスが増殖することを抑えられますが、奏効率は30~40%と言われています。核酸アナログ製剤は耐性ウイルスがいなければ、薬が効いている間ウイルス量は抑えられ肝炎は起きなくなります。しかしインターフェロンと違って投与をやめると肝炎が急激に再燃し、命にかかわることがありますので飲み続けなければいけません。

B型肝炎は肝硬変になっていなくても肝がんを認めることがありますので、活動性が低いキャリアの状態であっても定期的な採血や画像検査が必要になります

肝硬変

エコー画像

①肝臓辺縁が丸くなる
②表面がデコボコする
③腹水が溜まる

肝硬変はあらゆる慢性進行性肝疾患の終末像であり、多くの場合は不可逆性です。肝機能が保たれており症状のほとんどない代償性肝硬変と、肝性脳症、黄疸、浮腫、出血傾向などの症状が出現する非代償性肝硬変とに分類されます。原因としてはB・C型肝炎ウイルスとアルコール性が多くを占めますが、先述したNASHによる肝硬変も増えてきています。その他、自己免疫性、胆汁うっ滞性、代謝性、うっ血性、薬物性、特殊な感染症などがあります。肝硬変の確定診断は肝生検による組織診断によりなされますが、侵襲的な検査ですので実際は血液検査と画像検査を用いて総合的に診断することが多いと思われます。治療としては原因の除去と栄養療法・生活指導、肝硬変の合併症に対する治療になります。条件を満たせば肝移植を行うこともあります。肝硬変は肝がんができやすくなっていますので定期的な血液検査と画像検査を行うことが必要です。筋肉量の低下を意味するサルコペニアが合併すると予後不良になることがわかってきましたので、早期からの栄養療法が重要とされています。

肝臓がん

エコー画像

エコー検査で肝がんを見つけることができます

肝臓がんは原発性と転移性があり、原発性は肝細胞がんと肝内胆管がんなどがありますが、肝細胞がんが多くを占めています。肝細胞がんの約85%、肝硬変患者の約75%はB型・C型肝炎ウイルス感染者と言われており、発がん率は型肝硬変では年率約3%、C型肝硬変では年率5~8%となっています。肝炎ウイルス以外の肝細胞がんの危険因子は男性、高齢、アルコール多飲、喫煙、糖尿病、肥満などがあります。診断には定期的な画像検査が必須になります。AFP、PIVKA-Ⅱという腫瘍マーカーがありますが、腫瘍マーカーのみでのがんのスクリーニングは困難とされています。肝硬変になると3~4か月ごとのエコー検査、6~12か月ごとのCT/MRI検査が推奨されています。通常は造影剤を使ったダイナミックCTもしくはGd-EOB-MRIで診断することが多く、その他造影エコー、血管造影、肝腫瘍生検で診断することもあります。肝細胞がんの治療は肝臓の状態とがんの大きさ、個数などによって治療方針が分類されています。小さければ針で刺して焼灼する治療を行い、外科的に切除する場合もあります。個数が多くなるとカテーテルによる塞栓療法や動注療法、抗がん剤による治療を行います。適応を満たせば肝移植を行うこともできます。

当院では血液検査とエコー検査を行っており、必要時はCT/MRIを近隣の病院で行ってもらいます。

検査

血液検査:肝機能やB型肝炎・C型肝炎などの感染を調べることができます。その他に肝機能障害を引き起こす疾患を調べることができます。

腹部超音波検査(エコー):肝臓の形態や内部の性状で慢性肝炎か肝硬変のなっていないか、脂肪肝を診断することができ、肝臓がんも発見できます。重症の肝硬変やがんで見れれる腹水の有無も調べることができます。肝臓以外では胆のう、胆管、膵臓、脾臓、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、前立腺、大動脈などもみることができます。膵臓などの臓器は見えにくい場所があったり、皮下脂肪や内臓脂肪が多い方、食後や腸のガスが多い方は臓器が見えにくい場合があります。

腹部超音波検査で見えないときや、更に詳しく調べたいときはCT・MRIなどが必要ですので近隣の施設に紹介いたします。

肝生検:エコーで見ながら肝臓に針をさして組織を採取する検査です。肝臓の炎症や線維化をみることで慢性肝炎や肝硬変の診断を行います。肝腫瘍の新診断にも使われます。侵襲的な検査になりますので、必要時は近隣の病院に紹介いたします。