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ピロリ菌とは

ピロリ菌は主に幼少期に口から感染し、様々な疾患に関連していると言われていますが、消化管に関しては慢性胃炎(萎縮性胃炎)を引き起こします。ピロリ菌の感染は胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどに関連しており、治療することによりその発生や再発を予防することができます。 ピロリ菌感染の感染経路は、上下水道が整備されていない井戸水や、親族からの経口感染が主と言われております。昔はほとんどの方が感染していましたが、上下水道の整備や衛生環境の改善によりピロリ感染者は徐々に減っております。2010年の統計ではピロリ感染者は60歳代で50%以上ですが、20歳代では10%未満と減少しています。

ピロリ検査を行うには

ピロリ菌検査は健康診断で行う場合と、病院の胃カメラでピロリ菌感染が疑われた場合、その他ピロリ菌によって起こる病気が疑われる場合があります。健康診断でピロリ菌感染を指摘されただけでは保険診療でのピロリ菌の治療はできず、胃カメラが必須となります。

ピロリ菌感染を疑う胃カメラ所見

萎縮性胃炎

胃過形成性ポリープ

胃潰瘍

十二指腸潰瘍

胃がん

黄色腫

内視鏡を使用したピロリ検査

迅速ウレアーゼ試験

ピロリ菌は胃酸を中和するウレアーゼという酵素を持っており、ウレアーゼは尿素からアンモニアを産生する特性があります。ウレアーゼ試験は尿素が入った試薬に生検で採取した胃の組織を入れ、アンモニアが産生されるとpHが上昇しますのでpH指示薬でこれを確認する検査になります。

鏡検法

生検で採取した胃の組織を染色し(HE染色、Giemsa染色など)、顕微鏡でピロリ菌を証明する検査です。

培養法

生検で採取した胃の組織を、ピロリ菌の発育環境で培養して判定する検査です。

内視鏡を用いないピロリ検査

尿素呼気試験

尿素はウレアーゼによりアンモニアを産生しますが、同時に二酸化炭素も産生します。C13標識尿素が入った試薬を内服し、吐いた息のC13標識二酸化炭素を判定する検査です。

抗H.pylori抗体測定

ピロリ感染すると抗体が産生されます。血液中、尿中の抗H.pylori抗体を測定する検査です。ピロリ除菌後も半年から1年くらい陽性が持続しますので注意が必要です。

便中H.pylori抗原測定

糞便中のH.pylori抗原を検出する検査です。食事に関係しない簡便な検査になります。

胃がんリスク検査のときは抗H.pylori抗体測定を行います。

ピロリ検査時の注意点

  • 迅速ウレアーゼ試験、尿素呼気試験は食事に影響を受けますので、絶食時に行う必要があります。
  • PPI等の胃薬や抗生剤を内服していると、偽陰性になることがあるので、迅速ウレアーゼ検査、尿素呼気試験、便中H.pylori抗原測定を行う場合は2週間休薬する必要があります。
  • 内視鏡で一部の組織採取後にピロリ検査を行う、迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法は点診断と言われ、偽陰性になることがあります。
  • ピロリ検査で陰性であった場合でも胃カメラでピロリ感染を疑う場合は、他のピロリ検査を行った方がいいとされています。

ピロリ除菌

胃酸を抑制する薬を1種類と抗生剤2種類を7日間朝・夕で内服します。除菌の成功率は80~90%で、1回失敗しても2回目まで保険診療で治療できます。3種類とも一般的に使用される薬で特殊な薬ではありませんが、蕁麻疹や下痢などの副作用が起こる場合があります。服用後に何かありましたら当院までご連絡下さい。また、元々薬のアレルギーがある方、肝機能障害や腎機能障害がある方は治療ができないことがありますので、事前にご相談下さい。

ピロリ除菌判定

除菌をすることで胃・十二指腸潰瘍の再発を抑制したり、胃がんの発生を1/3に抑制すると言われており、きちんと除菌が成功したかを確認しておくことは重要です。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは除菌薬を内服終了後から4週間以降に除菌判定を行うと記載がありますが、除菌後に陰性となっても4週以降に陽転化する場合が5%程度あるので、2~3か月後に判定を行った方がいいとの報告もあります。

除菌判定には尿素呼気試験と便中H.pylori抗原測定が推奨されていますが、PPI等の胃薬や抗生剤を内服している方は2週間以上の休薬が必要です。腹部症状・胃酸逆流症状が強い方や、バイアスピリン等の消化管粘膜障害を引き起こす薬や、消化管出血の既往がある抗血栓薬を内服している方などはPPIを休薬しにくいので、その場合は血液中・尿中の抗H.pylori抗体を使用します。血液中・尿中の抗H.pylori抗体は除菌後も半年から1年くらいは陽性が持続するので、通常は除菌判定に使用しませんが、PPIを止めれない方では除菌薬を内服した半年以降に抗体の数値が半分以下になることが、除菌成功した指標とされます。